はるのーと

最初通牒

2019年3,4月の本棚

はじめに

出ました読書記録。書くことがないときの常套手段。

振り返れば、生まれてこのかた日記や記録のたぐいがろくに続いたためしがない。おそらくは「定期的に記録をつける」という感覚自体がないのだろう。有史以来、過去や歴史を記録することで発展を遂げてきた人類文明が、いまや数分後のことしか頭にないぽわっとした人間を生み出し続けているとはなんとも皮肉な話である。知らんけど。

ということで今日も文明に感謝しつつ、ぽわっとしたことを書きます。

変態王子と笑わない猫 13」&「教え子に脅迫されるのは犯罪ですか? 4」さがら総

変態王子と笑わない猫。13 (MF文庫J)

変態王子と笑わない猫。13 (MF文庫J)

まずはラノベから。二冊、どちらもさがら総氏の作品。

改めて並べてみるとタイトルのがすごい。まあこの出版不況のご時世、いろいろな販促戦略があるわけで。是非はともかく、最近のラノベはタイトルで勝負みたいな風潮がありそう。
唯一問題があるとすれば「一般書店での購入に若干の抵抗を伴うかもしれない」という点だが、これはオタク御用達†アニメイト†で万事解決する。羞恥心とかいうの、やはり捨てるに限るな。

さて、変猫はようやく最終巻を迎え、これで完全に完璧に全壁に終結となった。物語そのものは12巻でキリが付いていたから、こちらは短編をまとめたエピローグくらいの位置づけである。もちろん例によって横寺は変態だし(称賛)、月子ちゃんは可愛いし、全体的にゆるい……のだが、どことなく漂う終わりの雰囲気がなんだか切ない。1巻の初版発行が2010年10月31日(らしい)ので、およそ8年半の何かが終わったということになる。長い。そして「もう続刊がない」という喪失感。

思えば、初めて読んだラノベ学校図書館にあった変猫2巻だった。「艦隊これくしょん」と並んで私がオタク道を歩むきっかけになったコンテンツのひとつだし、性癖の原点でもあるから、いろいろと考えてしまう。たとえば中学生エミちゃんが背徳的に可愛い、とか。

とにもかくにも、ありがとうございました。先輩。

なお「教え子」のほうは相変わらず氏の自伝、もとい豊富な経験に基づいた新感覚ロリコメディといった感じ。健全ここに極まれり。個人的には鶉野冬燕ちゃんが好きです。
ところでこれをラブコメって呼ぶと、犯罪の匂いがしませんか?しませんね。するけど。

あなたの人生の物語テッド・チャン

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)

とにかく打ちひしがれた──発想の面白さとテクニックに。
こちら、その手の人間にはかなり有名なSF短編集である。どれくらい有名かというと、今更読んだのが恥ずかしくなるくらい。
特に好きだったのは、「バビロンの塔」「理解」「ゼロで割る」「あなたの人生の物語」「地獄とは神の不在なり」あたり。つまりほとんど全部。物理や数学のような分野に加え、神や天使を筆頭とする超越的な概念が作品背景にあって、作者の精神世界の深さが感じられる。
おすすめです。

「埠頭三角暗闇市場椎名誠

埠頭三角暗闇市場 (講談社文庫)

埠頭三角暗闇市場 (講談社文庫)

なによりも「椎名誠」という形容が一番ふさわしいかもしれない。「アド・バード」が好きなら読んでみてもいいと思うが、こちらは若干結末の歯切れが悪い感が否めないので、登場ガジェットと人物の愉快さを楽しめれば十分すぎる。というかそれだけで満腹。好きな人は好き、というSF。
ウージーと化した男の叫びの部分で笑ってしまった。

塩の街有川浩

塩の街 (角川文庫)

塩の街 (角川文庫)

おそらく一部の人間にとっては衝撃的であろう告白をすると、生まれて初めて有川浩作品を読んだ。
なんとびっくり、『図書館戦争』も読んだことがない。あり得ない話し……なので、今度読む。
さて、氏のデビュー作たるこの小説の感想はといえば、「とにかくめちゃくちゃ読みやすい」という点に尽きる。文体を気にせず夢中で本を読む性なのであまり意識していなかったが、いつにも増して早く読み終わったので驚いた。後述の『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』といい、元がラノベの文庫本にはなんだか不思議な感覚があって良い。
甘すぎるくらいの恋愛だったが、世界観は好みだった。ほかも読むつもりです。

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない桜庭一樹

少女小説風の文体や萌え系の挿絵・表紙(単行本では挿絵は全て削除)とは裏腹に、非常にショッキングかつグロテスクなストーリー展開で、読者に衝撃を与えた

Wikipedia砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」より引用、2019/4/23/1:08

これも有名な作品だが、今回幸いにして読む機会を得た。
端的に言うと、「少女小説風の文体とは裏腹に、非常にショッキングかつグロテスクなストーリー展開で、衝撃を与えられ」る。説明をしろ

……生半可には語れないが、何よりも登場する各要素が鮮烈で、消えると分かっている少女の余命を辿っていくような過程に苦しさを覚えた。それでいて読後感は悪くない。子供と大人の狭間の無力感といい、陰鬱な山陰の町の雰囲気といい、揺さぶられる。広義の百合……なのかもしれない。
こういうの好きです。

「裏世界ピクニック 3 ヤマノケハイ」宮澤伊織

裏世界ピクニック3 ヤマノケハイ (ハヤカワ文庫JA)

裏世界ピクニック3 ヤマノケハイ (ハヤカワ文庫JA)

空魚さん鳥子さん、もう結婚してしまえ。
1巻から読んできたが、どの巻も実話怪談が巧妙に物語に組み込まれていて飽きない。登場人物に暗い過去がある任意の物語、やっぱり最高です。あと小桜さんが可愛いな

「へんたいよくできました」雪尾ゆき

へんたいよくできました (百合姫コミックス)

へんたいよくできました (百合姫コミックス)

こちらは百合漫画。一言でいうと、さんかくかんけい。ふああ……(蒸発)

きっとn番煎じの議論なのだろうが、百合は精神だけで尊さを得られる(少なくともそのように感じられる)という点で、他と一線を画している。こちらからは手が届かないからこそ、限りなく澄んで見えるし、尊い
単巻完結なので、各位気軽に読みましょう。

「飛野さんのバカ 1」筋肉☆太郎

飛野さんのバカ(1) (アクションコミックス)

飛野さんのバカ(1) (アクションコミックス)

最高すぎて、死んでしまう(語彙力喪失)


後出しじゃんけん的な言い方になるが、これを知らない人生に意味はない……とまで言いたくなるような作品。展開に富んだ人間関係があるわけではないのに、二人の距離感が絶妙に絶妙で惹かれる。今年始まって以来の感銘を受けた。
驚くことに、なんとこちらウェブ上で無料配信されている。こんな素晴らしいコンテンツに金を取らなくて大丈夫なのか
ganma.jp

それにしても、世界にはまだこんなに尊いものが残されていると思うと、人生も少しは頑張れる気がする。
とにかくぜひ読んでほしい。いや読んでくれ。

人形の国 4」弐瓶勉

人形の国(4) (シリウスKC)

人形の国(4) (シリウスKC)

SF漫画。3巻まで既に読んでいる。
意味もなく書店をうろついていたら偶然続きが出ているのを見つけたので、反射的に買った。
やっぱり弐瓶勉氏の最大の魅力は登場ガジェットとメカニック(?)である。固有性って、代えがたい。

世界の中心で愛を叫んだけものハーラン・エリスン

はいそこ、エヴァとか言わない。こっちが正真正銘の本家。
総評としては、が濃かった。反社会的要素はほとんど全篇にわたって登場するし、まさに良い意味で感傷の対極にあるような作品。作者のエリスンは昨年亡くなったばかりだが、こういうSFもあるんだよな、と強く思わされた。これを読んだ後だと、私の推し『ニューロマンサー』の破天荒ささえ甘く思えてくる──そもそもベクトルが違うのかもしれないが。

なんだかんだで、表題作が一番好みだった。もちろん巷でも難解だとは言われているから、理解できたとは到底思っていないが、何かエッセンスが含まれているような気がする。
それにしてもタイトル、格好よすぎませんか?

おわりに

どうやら「記録」の習慣のみならず「整理」という概念まで失ってしまったらしく、おかげで紹介する本の並びに秩序というものがまるでない。基本的には読了した順に並べたつもりだが、そもそも読む順序と読む期間が支離滅裂なので、一か月前に読み始めた本を差し置いて、前日買った本を一気読みしたりする。まあこの程度はよくあることだ。

何よりも問題なのは、分野の偏りである。改めて振り返ると、ほぼSFと百合しか読んでいない。言い訳はいくつかあって、「名作を消化することを最近の目標にしている」だとか、「新規分野の開拓をしたいと思っても、守備範囲を広げると現金が秒で蒸発してしまうのが分かっているから、恐ろしくて足を踏み込めない」だとか。いやほんとに金ねンだわ……

ただ、突き詰めればこれは個人のポリシーの問題である。分野を絞らずに、広範囲をある程度に網羅するジェネラリスト的オタクを志す者として、知識と経験の偏りはあまり好ましくない。

あまねく、全ジャンルの本を読もうな。(自戒)